19世紀、ウクライナがロシア帝国に属していた時、ウクライナは小ロシアとよばれることがありました。この小ロシア出身の作家にニコライ・ゴーゴリがおります。彼が作品を書く際に使用した言語はロシア語でした。ロシアの主都、ペテルブルグに出て活躍したゴーゴリには、幻想都市ペテルブルグを舞台にした小説群があり、後世の作家に多大な影響を与えました。「ネーフスキイ通り」、「鼻」、「外套」、「肖像画」、「狂人日記」などです。殊に人道主義的な「外套」は、ドストエフスキーをして「我々は皆ゴーゴリの『外套』から生まれ出でたのだ」と言わしめました。ペテルブルク小説群に対して、ウクライナものと呼べる小説群も書いております。出世作の「ディカニーカ近郷夜話」、「昔気質の地主たち」、「ヴィイ」、「タラス・ブーリバ」などです。故郷のウクライナを詩情豊かに語っております。中でも「タラス・ブーリバ」は、ウクライナ侵攻で激戦地となっているサボリージェのコサックを主人公とした幻想的な物語です。小説の舞台となった地は、既に嘗ての面影を見ることは出来なくなっているのでしょうか。