濹東綺譚―永井荷風

今月は40年ぶりで「濹東綺譚」を読み返しました。「すみだ川」と同じように、初めて読んだのは二十歳の時でした。ひどく感動したらしく、上京して直ぐ、「濹東綺譚」の舞台の痕跡を探しに向島近辺を散策しました。東京の右も左も分からない田舎者に何かを探し出せるわけもなく、Gayのおじさんに声を掛けられたことだけは、覚えています。出だしの警官に声を掛けられる場面以外は全く記憶になく、初めて読んだような感動を覚えました。率直に申して、二十歳そこそこの若造に理解出るような内容ではありません。初めて読んだとき、一体どこに感動を覚えたのか、自分乍ら不思議でなりません。改めて向島探訪に出掛けたいと思いました。

『鯨のジャンプ』

弊社は先月、柏木節子著『鯨のジャンプ』を刊行しました。全日本海員組合発行の「船員しんぶん」に二十五年間に亙って掲載された珠玉のショート・ストーリー作品集です。様々な切り口で人生の喜怒哀楽を、ペーソス溢れる、ユーモアを交えた、巧みな語り口で表現しています。どのストーリーも短いとはいえ、注意深く構成されており、読み応えがあります。読み始めると、著者のストーリーテリングに引き込まれて頁を繰る手が止まらなくなります。多くの人に読んで頂きたい作品です。

終活セミナー

終活サポートの第一弾として、来る7月19日(水)10時より終活協議会さんの本部(豊島区巣鴨)で、終活セミナーを開催いたします。参加費は無料です。定員は10名で先着順となります。詳しい情報は、こくちーずプロの以下のURLでご確認の上、お申し込みください。皆様のご参加をお待ちしております。

https://www.kokuchpro.com/event/53594ac70af8be6e6f13a081e971b743/

永井荷風

先日、久しぶりで荷風の「すみだ川」を読み返しました。初めて読んだのは二十歳の時でしたが、ひどく感動したことを覚えています。その後数十年経って読み返しときは、何も感じるものがなかったですが、この度は素直に小説に没入でき、共感出来ました。ここ数年機会があれば荷風の随筆や評論などを読んでおり、殊に失われゆく江戸の文化を哀悼したものには、文句なく共鳴していました。未だ江戸の姿が残っている明治初期に生まれて戦後の昭和三十年代まで生きた荷風にとって、江戸の変貌を見続けることはどのような気持であったか、美しい大川の流れが悪臭を放つ溝川へと変わる姿を見届けることは、どれ程悲しいものであったか。荷風が小説に描いた浅草や向島辺を訪ねて、更なる変貌を観察し、江戸の面影を探したいと頻りに思っています。

1970年代のアメリカ映画

1970年代は、ちょうど私の思春期に重なる時でした。ビートルズが解散し、ベトナム戦争が泥沼化し、文化大革命が中国全土に吹き荒れた時代でした。アメリカにはベトナム戦争が色濃く影を落としていました。この時代に米映画に新しい波が起こりました。アメリカンニューシネマです。これまでのハリウッド映画とは異なるアンチヒーロー、アンチハッピーエンドが特徴でした。英雄ではない弱い身近な存在の主人公に強い共感を覚えました。スケアクロウ、セルピコ、狼たちの午後、バニシング・ポイント、題名を上げればキリがない数々の作品に感銘を受け、私の人生に影響を与えました。アメリカが内向的になり、自分自身を見つめ直した最初で最後の時代ではないかと思います。80年代に入ると、楽天的なハリウッド映画に戻ってしまいました。あの時代は私にとって特別な時代でした。

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本日、小さな出版社のブログを開設しました。このブログでは、出版業界のニュースやトレンド、自社で出版する本の紹介、社員の個人的な思いなど、さまざまな情報を発信していきます。

弊社では神保町すずらん通りの共同書店PASSAGE by all reviewsに出店しております。本日は、新宿で生まれ育った著者によるディープな新宿案内誌「新宿魚座通信」を出品する予定です。全頁が著者の手書きになる不思議な魅力を湛えた本誌は、弊社一押しの作品です。ぜひ手に取ってご覧になって下さい、沼ること間違いなしです。